結論から:B型・A型を検討する前に、まず就労移行支援の利用を勧めます
「早く社会復帰したいから、まずはB型(またはA型)から始めたい」という相談を受けることがあります。気持ちはよく分かりますが、私は障害福祉サービス事業所を運営する立場から、まずは就労移行支援の利用を検討することをおすすめしています。焦って選択肢を狭めてしまう前に、この記事で理由をお伝えします。
なぜ「先に就労移行支援」なのか
就労移行支援は原則2年間利用でき、一般企業への就職を目指すための訓練・就職活動支援・定着支援を一貫して受けられる福祉サービスです。一方、就労継続支援A型・B型は、一般企業での就労が難しい方が働きながら力をつける場所という位置づけです。
厚生労働省の通知(障障発0329第7号・2024年3月29日)でも、A型を利用する際の暫定支給決定にあたっては「一般就労や就労移行支援などの他の事業の利用の可能性を検討すること」と明記されています。制度としても、いきなりA型・B型に進むのではなく、まず就労移行支援を含めた選択肢を検討する方向性が示されているのです。
運営者として実際に見てきたこと
私自身、事業所を運営する中で、自分の能力や可能性を過小評価して、いきなりA型やB型を希望される方に一定数出会ってきました。世間の目や今までの経験から、すぐにでも社会参加したいという焦る気持ちは、私もよく分かります。
ただ、大前提として「人生はそれなりに長い」ということを、まず思い出してほしいと思っています。自分の可能性ややりたいことについて、本気で向き合った時間は、意外と少ない方がほとんどです。その可能性を探る時間は、誰にとっても必要だと思います。
人生のうちの2年間を、就労移行支援という「自分の可能性ややりたいことを見つける時間」に充ててほしい。これが、私が就労移行支援を先に勧める一番の理由です。最初は興味本位でも構いません。興味関心があるところから、あらゆることに触れてみるべきだと思います。障害福祉のサービスは、失敗してもいい場所であることも、ぜひ覚えておいてください。
それでもB型・A型が適切なケースもある
もちろん、すべての方に就労移行支援が向いているわけではありません。体調の波が大きく、まず通所や生活リズムを整えることが優先される方、就労移行支援を利用してもなお一般企業での就労が難しいと判断された方には、B型・A型が適切な選択肢になります。大切なのは「いきなり選ぶ」のではなく、選択肢を検討したうえで選ぶことです。
4つの選択肢を比較する
| 選択肢 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 就労移行支援 | 原則2年間、一般企業への就職に向けた訓練・自己理解・実習を行う | 早く動きたいが、自分の可能性ややりたいことをまだ探れていない人 |
| 就労継続支援A型 | 事業所と雇用契約を結び、最低賃金を得ながら働く | ある程度安定して決まった時間働ける人 |
| 就労継続支援B型 | 雇用契約なし。工賃を得ながら、体調に合わせた軽作業などを行う | 体調の波が大きく、まず生活リズムや通所の習慣を整えたい人 |
| 一般就労(直接) | 就労系サービスを経ずに、障害者雇用枠などで直接就職する | すでに就業準備が整っており、自分の適性も把握できている人 |
こんな方は、まず就労移行支援の利用を検討してみてください
以下に当てはまる項目が多いほど、いきなりA型・B型を選ぶより先に、就労移行支援の利用を検討する価値があります。
- 自分の得意・不得意や、やりたいことを、まだ言葉にできていない
- 「早く社会復帰したい」という焦りが先に立っている
- 一般企業への就職に興味はあるが、自信が持てない
- IT系など気になる分野はあるが、実際に試したことがない
- 体調は比較的安定していて、通所自体は続けられそうだと感じる
逆に、体調の波が大きく通所自体が難しい、すでに一般企業での就労が難しいと判断されている場合は、B型・A型から検討する方が現実的なケースもあります。
就労移行支援の2年間で、実際に何をするのか
「2年間、具体的に何をするのか分からないと不安」という声もよく聞きます。就労移行支援の訓練内容は事業所によって幅がありますが、大きく分けると次のような流れで進みます。
- 自己理解・生活リズムを整える期間(体調管理・通所の習慣づくり)
- ビジネススキルや専門スキルの訓練期間(コミュニケーション、PCスキル、興味のある分野の学習など)
- 実習・模擬就労を通じて実践力を身につける期間
- 就職活動のサポート(応募書類・面接対策・求人選び)
- 就職後の職場定着支援(入社後も一定期間フォローが続く)
この流れの中で、②の期間にどの分野を学ぶかは、事業所によって「一般型」か「専門スキル特化型」かで大きく変わります。前述のとおり、最初は興味本位で選んで構いません。訓練を進める中で「思っていたのと違った」と感じたら、事業所を変えることも可能です。
よくある不安へのQ&A
体調が不安定でも利用できますか?
多くの事業所が、通所日数や時間を体調に合わせて調整できる仕組みを用意しています。最初から週5日フルタイムを目指す必要はなく、週数日・短時間から始めて、徐々に通所日数を増やしていく形が一般的です。見学・体験の際に、体調が悪い日の対応をどうしているか確認しておくと安心です。
途中でA型・B型に切り替えることはできますか?
可能です。就労移行支援を利用してみて、やはり一般就労を目指すよりも、まずは働きながら力をつけたいと感じた場合は、A型・B型へ切り替えることもできます。「就労移行支援を使ったら後戻りできない」ということはありません。
年齢制限はありますか?
就労移行支援は原則65歳未満の方が対象です(自治体の判断により例外もあります)。年齢だけで諦める前に、お住まいの自治体の障害福祉窓口や、興味のある事業所に直接相談してみることをおすすめします。
就労移行支援を選ぶなら、どのタイプが向いているか
就労移行支援を使うと決めたら、次は自分に合ったタイプを見つける番です。事業所によって、ビジネスマナーなど基礎から幅広く学ぶ「一般型」と、IT・プログラミングなど特定分野に特化した「専門スキル特化型」に大きく分かれます。制度の基本や選び方は「就労移行支援とは?IT特化型との違い・利用条件を解説【基本ガイド】」で詳しく解説しています。
「興味本位でいい」という前提に立つなら、IT分野は選択肢の一つとして検討しやすい領域です。パソコンでの作業に興味がある方、専門スキルを積み上げてみたい方は、「IT特化型就労移行支援の選び方」もあわせてご覧ください。発達障害の特性別に選びたい方は「発達障害におすすめの就労移行支援ランキング」、専門的すぎるか不安な方は「Neuro Diveが『難しい』と感じたら検討したいミラトレとの比較」も参考にしてみてください。
まとめ
早く社会参加したいという焦る気持ちは自然なことですが、いきなりB型・A型を選ぶ前に、まず就労移行支援という「自分の可能性を探る2年間」を検討してみてください。興味本位から始めて構いません。障害福祉のサービスは、失敗してもいい場所です。自分に合った就労移行支援のタイプを見つけて、まずは一歩を踏み出してみてください。


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